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デューイの教育思想

デューイの教育思想

アメリカのプラグマティズムの哲学者として名高いJ・デューイも、社会主義や進化論などの新しい考え方がわきおこった19世紀後半の思想状況のなかで、さまざまな人々から豊富な刺激を受けながら自分の思想をつちかっていった。19世紀末には、シカゴ大学の付属小学校で児童に実験的な教育をこころみ、その成果を『学校と社会』(1899)で公表している。この本でデューイもまた、共同体、つまりコミュニティの崩壊を教育の問題としてとりあげている。数世代前の人々は、同じコミュニティのなかで生産と流通と消費をともに分かちあって生活してきたが、工場制度の浸透に伴って、生産は都市に集中し、流通も集約化され、子供たちにとって、自分たちの消費生活が何によって、まただれによって支えられているのかが実感できなくなってしまった。そうした社会認識の欠如を、デューイは、学校のなかに手作業をもちこむことによって、埋めあわせしようとしたのである。子供たちは、綿つみ仕事から服地の生産までの一連の手作業を課せられ、このプロセスで人類の知識・技術の歴史的な進歩のプロセスを学びとり、分業と協働の意義を実感し、さらに、目的をもって考えながら作業に集中していく習慣を身につけていく。これらの知識や資質は、産業社会に生きていくうえで欠かせない要素である、とデューイは考えたのである。デューイの教育思想は、「なすことによって学ぶ(learning by doing)」という標語によって語られることもあるが、この標語には、単に教育活動の方法原理の大切さが語られているだけではない。もはや、椅子にすわって教科書から学ぶだけでは、産業社会に生きていく人間の資質は形成することができない、という認識が込められているのである。ちなみに、この標語自体はデューイのものではない。[宮寺晃夫]